日番谷 冬獅郎? 2




朝、妹達の部屋から出て来たルキアは いつになくかなりぼ〜っとしていた。
無理もない。 
明け方に虚が大挙して現れた為に俺とルキアだけが この地区担当死神の車谷を
手伝ったからだ。

ーー くそ! 乱菊さんや冬獅郎はともかく、一角、弓親、恋次が来ねえのは
   どうなんだよ!! 
     破面のヤツラじゃねぇからって、あの数にシカトねえだろ!!


「・うっ・・・今朝はうまく結べぬ・・・・一護・・・・・。」

制服のリボンをずーっと結んでいたルキアが とろんとした潤んだ瞳で俺を見てくる。

ーー ちきしょ!!  ねだる様なその顔は すごく可愛い! 
   けど、至近距離でリボンを結ぶなんて俺には 無理だから!

「そんな顔したって、俺は知らねーからな!!  いいから、行くぞ!」
「ーーーーそうか では、学校で恋次にでも結んでもらうとするか。」

玄関で靴を履いていた俺は 思わず振り返って聞いてしまう。

「なんで、そこで恋次の名が出るんだよ!?」
「ーーーーぅん?! 貴様は知らんのか? 
 あんな眉のくせにアヤツ 以外に器用なのだぞ!」

ーー 知らねーし、知りたくねーし!  眉毛は何にも関係ーねーから!!  
   何よりお前が不器用過ぎるだけだっつの!!  くそっ!!

「・・・・だーもー!!  俺がやってやるから貸せ!」
「何のかんの言っても、貴様はやってくれるって信じておったぞ、一護。
 私の中にいる貴様はそういう男だ!」

そう言って、ルキアは俺の前で偉そうなポーズをとると悪戯っぽく笑いやがった、くそ! 
玄関先で襟のリボンを結んでやる俺の目の前に憎たらしいくらいに可愛いルキアの笑顔がある。 
寝不足でいつもより潤んだ瞳と赤い頬のルキアは俺の心臓を壊すつもりだ。 



俺たちは 玄関で時間をくった分、走っていつものバスに乗り込んだ・・・・・。

「 はぁはぁ・・・・・間に合った!」
「 はぁはぁ・・・・、 なんか・・・・一護・・・はぁ・・・
 少し掴まっても 良いか?」
「 はぁ・・はぁ・・・・。  え? って、お前。 
 ・・・・大丈夫かよ?!」

珍しく俺を頼るようなことを言って、俺のシャツの袖を縋る様に掴むルキアに驚いて、
少し屈んで覗き込むと、肩を上下させ、荒く息をするルキアの顔は血の気を失い真青だ。 
俺はルキアの手から鞄を奪い、右手に二人分の鞄を持って左手でルキアの華奢な肩を
自分の胸に抱き込んで支えた。

「!!・・・・・一護?! 
 そこまで貴様に頼らずとも大丈ーー」
「煩せえ!! 黙ってろ!!
 狭い車内で目立ったら恥ずかしいだろ。」

(いや、既に俺らは目立ってるって、視線が痛え!! 
 傍目には どう見ても馬鹿っプル?!
 いやいや、 無理矢理 俺が ルキアを押さえ込んでる図!? 
 しまった!
 俺らがいつも乗るこのバスには ルキア目当ての男が多く乗ってたっけ。
 うぉおお・・・・。 俺かなり 睨まれてるよ!! ちきしょ!!
 仕方ねぇだろ!!
 こんなに顔色悪ぃんだからよ!!!)

心の中で必死に言い訳しながら、思わず睨み返す俺。
俺の胸元に苦しそうな顔を寄せて、腕の中で大人しく俺のシャツを掴んで
ぐったりしているルキア。

( くそ!! 弱ってるコイツっていつも以上に可愛くて守りたくなって悪くはねえが
 どうせなら元気ないつものルキアをこうしたい・・・・。)
  
ーーーやべえ!!  俺、今何を考えた?!



バスを降りてから、俺の前をふらふらと歩くルキア。

「なぁ、 おい、ルキア!
 誰かにチャリ借りて送ってやるから帰ろうぜ?
 お前、ぜってぇ 具合悪いんだって・・・・、
 ふらふらしてるぜ!」
「・・ん。 大丈夫。
 それに昨日帰りがけに今日だけは休むなって、恋次に念を押された。」
「・・・・え?! 
 帰りがけっていやぁ、俺は恋次に『明日は休むからよろしく』って言われたぜ。
 なんだよ、アイツ!
 自分は休むくせにお前には来いって、休むなって言ったのかよ!」
「・・・・なんだと!? 
 恋次のヤツめ、許さぬ!!」

「ちょっ、なんだ? 
 校舎の真ん前にロールスロイスみてえな 黒い偉そうな車が・・・・」

一護がそう言いかけた時、ルキアが 急にその車に向かって走り出した。

「! ちょっと待て、ルキア!! お前走るな!!」
 
そう言って、ルキアの腕を掴もうと手を伸ばした途端、ーーーー

「ぐぅえっ!!!」

ありえない声と共に べしゃっ!! って効果音?が して 一護が倒れる。



校舎前の黒塗りの車の助手席から燕尾服の清家信恒が降りて、後部座席のドアが
開けられると グレイの品の良いスーツを着た朽木白哉が姿を現す。

「兄様!!」

とても嬉しそうな笑顔でルキアが走り寄って来る。

「白哉兄様! 如何されたのですか?」
「今日は授業参観なのであろう。
 父兄がそなたらの勉強している様を見る日だと聞いたゆえ参ったのだ。」
「・・・・そんな・・・わざわざ兄様に足を運んで頂けるなん・・・・・」

そこまで話をした時、ルキアの身体が大きく揺れた・・・。

「ルキア!!」  

白哉は 素早くその小さな身体を支えた。
そうして、小さく眉を顰めると ルキアの額に手を当てた。

「・・・・兄様・・・・申し訳ありません・・・」


「白哉!! てめえぇ〜!! 
 なんのつもりだ!?  重いだろ!」

そう白哉を罵倒しながら、苦しそうな顔で前かがみになって、まるで何かを背負って
いるかのような変な恰好で黒崎一護が歩いてくる。

「朽木隊長!!
 突然、俺に霊圧をかけてきやがって、いったいどういうつもりだ!?」

いつの間にか、苦しそうな顔をした日番谷 冬獅郎も 現れていた。
流石に隊長格、とりあえず眉間に深いシワを寄せながらも真直ぐ立っている。

「兄らに聞きたい事がある。
 現世での任務は熱があっても休めないのか?」
「「は?・・・・・まさか・・・・!?」」
「・・・・あの・・・兄・・様・・・・」

それが 白哉に肩を支えられ、額に手を当てられた、いや白哉の大きな手で瞳まで
覆われて赤い顔をしたルキアの事を言っているのだと全員がやっと気付く。

「ーーーいや、だから俺は具合悪そうだから、帰ろうって・・・」
「俺は、朽木が熱あるなんて聞いてねえぞ、黒崎!!」

そんな一種異様な空気の中、明るい声が 割り込んでくる。

「一っ護ぉ、おっはよ〜ん!! 
 おまえ!! おれは見たぞぉ〜!! 
 お前、さっきバスの中で俺の朽木さんの肩を無理矢理抱いて
 何してくれちゃってるわけ!?」

ーー うおぉぉぉ・・・・・。  最悪だ!  
  最悪のタイミングで最悪の情報を持って来んじゃねえ、啓吾!!

どべしゃっ!! 再び蛙が潰れてしまったかのような音がして、一護が突っ伏した。

ーー くそ、重てえ!!   なんで冬獅郎まで霊圧かけてくるんだよ!? 
   だいたいなんでこいつら狙い撃ちで霊圧をピンポイントに懸けることが
   できるんだよ!! 
   しかも、俺は何も悪くねえ!!
   ふと、隣を見ると、啓吾が白目をむいて倒れていた・・・・・。 
   お前ら、ただの人間相手でも容赦ねえ!!

「・・あの・・兄様・・・・申し訳ありません。
 ・・・・・その、もう、大丈夫です。 
 ・・・手を・・・あの・・・ 全て、私の不徳の致すところです・・・・。
 一護も日番谷隊長もいつもよくして下さいます・・・・・。」
「何か世話になっているのか?」
「・あの・・・・、日番谷隊長は 私が落ち込んでいると抱きしめて
 慰めて下さいます・・・。
 いつも突然なのでちょっと驚かされますけれども・・・・・・。」

ーー うぉおっ!! ルキア、今それを言うか?!

べしゃっ!! 変な音がして、日番谷が突っ伏す。

ーー くそっ!! 朽木ぃ、ぜってぇ、霊印入れて来てねえだろ!! 
   だし、黒崎、てめぇまでが何で俺にくそ重い霊圧かけてきやがるんだ!? 

「・・・・一護も今朝は着替えを手伝ってくれましたし・・・・・」

ーーー うおおぉ!!  白哉、てめえ 俺の上にちょく乗っただろ!!?
    靴の踵が背中に!!

「ルキア! てめ!!  ちげーだろ!!
 リボン結んでやっただけだって・・・
 ちゃんと言え!!
 白哉 てめえ! 俺の背中に普通に乗ってんじゃねえよ!!」

「兄様?  あの・・・・さっきから何が起きているのでしょうか
 あの、兄様 
 そろそろ手を離していただけないでしょうか?
 これでは何も見えませぬ。」  
「良い。  日番谷隊長、ルキアは熱がある故屋敷に連れて帰る。」

こうして お騒がせ兄妹は 車に乗って帰っていった。  
女生徒たちに黄色い悲鳴と俺らが見せた変なパフォーマンスという噂話を残して・・・。

「・・・・た〜いちょvvvv 
 大丈夫ですかぁ?
 朽木隊長にバレちゃいましたね?」
「煩せえよ、松本。」


「黒崎、てめえ!! 
 何で今日に限って、熱があるルキアを連れてきやがった?  
 それに何でてめえまで俺に霊圧かけやがった?」
「はぁ? 俺は何にもしてねえだろ。 
 だいたい、霊圧かけてきやがったのは 冬獅郎だろ?!」
「煩せえ、黒崎。 日番谷隊長だ! 」  

ーーー黒崎のヤツ、なんだよ!! 無意識かよ・・・・!
   ちきしょ、朽木。  今日の事は 覚えておくからな。


前日に恋次を尸魂界に戻して六番隊を任せた白哉は この日、早朝から現世に
来ていたので登校前にルキアと一護が 虚退治をしていた事は知っていた。
だが、ルキアに触れ、熱が高いのを知った白哉は黒崎一護と日番谷 冬獅郎が 
ルキアの体調に無頓着である事に腹を立てて霊圧を二人にかけたのだった。
(最初は 自分のところに来ようとしているルキアを一護が引き止めようと
したからだが・・・。)

その二人が どうやらルキアに気があるらしいと分かり、尚更霊圧をかけたのだった。
そもそもルキアが体調が悪いのをおしてまで学校に来たのは 白哉が授業参観に来る
事を知った恋次がルキアに休まないように念押ししたからだ。 
全ての発端が自分だという事を この『 兄 』が 知る日は永遠に来ない。






  ルキアが 元気でないため、『お見舞い』と違って  兄様が暴走気味です。 とうとう、一護を靴で踏みつけるような暴挙にまで・・・。 あれ?  お礼文にも 関わらず、 また・・・・ orz 白哉ファン、一護ファン、日番谷ファンの方々、  ホントごめんなさい。  m(_ _)m Mar.29.2008 - Apr.22.2008 「やる気の元」でした。 ありがとうございました! TOP