日番谷 冬獅郎 3??



その日まで、ずっと平子達と虚化の訓練をしていた俺は 出席日数を気にして 
とりあえず学校に少しだけ顔を出す事にした。
久々に来た学校は こっちのほうが間違いなく自分の今までの実生活だったというのに、 
現実感が持てなくて居心地が悪かった。
たつきや 啓吾、水色から久しぶりって、挨拶の後に 口々に質問を浴びせられた・・・。

俺は丁度いい答えを用意してなかったので、適当なことを口篭りながら相槌を打つように
曖昧に返事をしていた。

ふと気付けば、教室にルキアの姿がない。  
霊圧を探ってみれば、屋上にいるらしい。  
しかも、一緒にいるのは・・・・・・・   なんだよ!!

俺は 急いで階段を駆け上って、屋上に向かう。
ドアを勢いよく開けると、 冬獅郎がルキアの後ろにぴったりと立って、ウェストに
腕を回して抱きしめていた。

「おぉっ!  一護、貴様。   久しぶりではないか?!」

俺が 突然現れたことに、驚きながらもルキアが嬉しそうに俺に駆け寄ろうとするのを

「朽木、まだダメだ!」

冬獅郎のヤツ 腕の中にルキアを引き戻しやがった。

「お前ら、一体何やってるんだよ?!」

訝しげに聞く俺に

「何だ、一護?!  見てわからぬのか?」

ーー ちくしょ!  分かるかよ! ってか、分かりようもねえよ!! 
   どう見ても冬獅郎がルキアにべたべたしてるだけじゃんかよ!! 

「霊圧を纏める訓練してる最中だ。
 気を散らさせるな、黒崎!」


冬獅郎が少し勝ち誇ったような笑みをその顔に浮かべたように見えたのは俺の気の所為か。
俺はその屋上の隅に恋次が極悪な仏頂面でフェンスに凭れて立っているのに気が付いた。

「よぉ、 恋次。  ありゃなんだよ?」
「・・・よぉ、 一護。  なんだってなぁなんだよ?!」

そう言って俺をぎろりと睨んできやがった。  

「てめえ。 俺に当たるなっつうの。
 それよりアレを 何とかできねえのかよ!?」
「・・・・・・ばーか! 
 できたら、こんなとこにいねえっつうの!!  
  あれで一応ちゃんとした事を訓練してるんだから、仕方ねえだろ。」
「あーんなにべたべたしなきゃできねえことなのかよ!?」
「ーーーーーーー。 
 んなこたぁねぇが、ルキアにそれをどうやって説明するよ?!
 てめえに ルキアを納得させるような説明ができるのかよ?」
「ーーーーーわりぃ、無理。」

あの超鈍いルキアにそんなに他の男とくっついて欲しくないと どういえば
分かってもらえるだろうか。

今までルキアのその無防備さを甘受してきた自分達も同罪なのに・・・・、
それについて今後どう説明するのか・・・・・・。

「〜〜〜〜だからって、ここでこうしてずっと指を咥えて見てるなんて俺には
 無理だから!! ちきしょ。」
「この間、隊長には会っちまったから隊長絡みの手は使えねえし・・・・・・・、
 あ!」
「あ!ってなんだよ。」
「一護、お前ちょっと これを調べろ。」
「ぇえぇ〜〜 なんだよ、恋次??!」



「なんだ?!  二人揃って、帰るのか?」

俺と一護が 近づいて来るのに気付いたルキアが そう声をかけてきた。

「いや。  お前さ、今日って何日か知ってるか?」
「はぁ?! 恋次、何を呆けた事を聞くのだ?」
「お前さ、現世に来る時、総隊長に約束させられてた事があったろ?!」
「ーーーえ?  
 ああ!! そうか・・・・。  
 申し訳ありません。  日番谷隊長。 
 せっかく霊圧を集中させるコツを教えていただいていたのですが、私は 毎月15日に
 総隊長に十三番隊の書類を届ける序でに 現世の報告をする約束をしております。
 それは 明日ですが、今月は、その・・・・私が現世の和菓子を総隊長にお持ちする
 約束をしています。
 すみません。 今日はこれにて帰らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

そう ルキアに言われては

「そうか。 わかった。」

いつもより 眉間に深い皺を寄せながらも、日番谷隊長は 諾と返事するしかない。

俺は  思いのほかすんなり二人を引き剥がせた事に満足して、こっそり一護と目配せして
にんまりとする。



その表情に日番谷 が気付いた。

(ーーー阿散井、てめえ!!)

「ルキア、俺が 携帯で和菓子屋を幾つか調べといたから、今から行こうぜ。」

一護がそう声をかけている。

「なんだ、一護。 貴様にしては 珍しく気が利いておるな。」
「てめえ、それが調べてやった俺に対する言葉かよ?!」
「それより、大事な事を思い出させてやった俺に感謝して欲しいな。」

そんな軽口を叩きながら、阿散井と黒崎が ルキアを挿んで屋上を出て行こうとするのに

「待てよ、阿散井。」

日番谷が 声をかける。

「?!  何スか? 日番谷隊長。」
「黒崎は 朽木を案内しなきゃならねえが、お前は行かなきゃならねえ訳じゃねえだろ?
 朽木に教えてやるための時間が余ってる。  
 どうせだからお前に稽古をつけてやるよ。」

そう言って日番谷隊長が にやりと不敵な笑いを浮かべた。

「ーーーーえ?!」

(ーー前回 てめえが ルキアに余計な事を言った所為で 俺らは大変だったんだからな。
 だいたい、てめえの隊長が現世に来るなら来るって、俺に報告くらいしろっての!!)

俺を見る日番谷隊長の顔が なんかいい感じに生き生きしている。

「おぉ、 恋次。  良かったではないか!
 他隊の隊長に稽古をつけてもらえる機会など、滅多にあることではないぞ。
 私は一護に案内してもらうゆえ、貴様は来ずとも構わぬ。  
 ぜひ稽古をつけてもらえ。」

こんな不穏な空気を 読める訳がないルキアが 良かったなって、気持ちを込めて
俺にそう言ってくれた。

羨ましそうに俺を見る一護。  

ーーー全然羨ましく無いから!! 
   俺的には 茶渡とさんざん鍛練してきたから、今日は休みたいっつうの!
   久々にルキアと会って、出掛けられる絶好の機会だから!


何か言おうとしていた一護をルキアが引っ張っていく。

「ではな、恋次。  一護、行くぞ!」

ルキアに手を引かれ、少し頬を染めながら 

「ちょ、待て、ルキア・・・・おい!!」

引き摺らる様に一護は 屋上を後にした。

思いもよらない展開に呆然としている俺を残して・・・・・・・・。  

ーーーちくしょう!!


『はい、日番谷隊長、ご用件をどうぞ。』
「俺と阿散井の半径三百間の空間凍結を頼む。
 もちろん、魂魄と建造物の保護もだ。
 ・・・・・・あぁ、ちょっとした鍛練だが、念のためだ。」

後ろでは 伝令神機で尸魂界との楽しいやりとりが 聞こえてくる。 

(うぉ・・・・、日番谷隊長は がち本気だ!)

俺は 背中に嫌な汗をかきながら 覚悟を決める。
この人を超えられねえなら、もちろん朽木隊長だって超えられる訳がねえ!!
それに間違いなくルキアの絡みもある。 
ーーーなら、俺も本気でいくしかねえ。

ゆっくりと振り向いた俺は互いの気持ちを察した日番谷隊長とにやりと笑い合った。






続いてしまいました。  ちょっと気に入ってます。  ルキア絡みの強気な日番谷隊長vvvvvv。 (正直、乱菊さん好きでいて欲しいんですけど。   こういうサイトですから・・・・・。)   Apr.23.2008 〜 May.24.2008 『やる気』の元 ありがとうございました! TOP