一護BD




「一護、今日は貴様の誕生日なのに なぜ 動物園なのだ?
 貴様の行きたいところに行った方が 良かったのではないのか?」

電車を降りて 動物園に向かう俺にルキアが聞いてくる。


つばの広い白い帽子、さっぱりした白と青紫色のワンピース、
白いレースの半袖の・・・
何つうの上着?を着たルキアは お嬢様っぽく見えて らしくないっちゃ
らしくないが・・・、 
黒髪と白い肌を引き立てて とても綺麗だ。
  

浦原商店の雨が 二週間前に一式持って来たが、きっと見立てて
用意したのはたぶん白哉だ。

(浦原が用意する服はなんつうか、高校生らしい服って言えば 
 そうなんだろうが・・・、
 もう少しミニスカとか 露出が多い気がする・・・・・。)



−− くそ!! 他の男が選んだ服が似合っている・・・・。 
   こんなちょっとした事を悔しがるってのが ガキなんだろうけど。 
   ルキアを見る俺の一瞬の、そんな気持ちが顔に出てルキアが動物園で
   よかったか?
   なんて聞いてきたのか・・・・。

「ーーーいや、誕生日ってのは 全く関係ない。 
 ただ 久しぶりに 動物園に来てみたかったんだよ。
 ガキの頃に母親と遠足で来て以来だから。」

ルキアの顔が少し辛そうに曇る。

「ばぁか、そんな顔するな!! 
 もうとっくに吹っ切れてるって。 行くぜ!」

ーー おまえのおかげでな。
   言外の言葉は照れくせぇし、きっとお前は否定するから言わねぇけど。

俺は ルキアの背を軽く押して、よく晴れた日曜の所為でとても混んでいる動物園の
入り口に促す。 
小柄なルキアは 気を付けていないとこういった人込みの中で見失い易い。 
今日は大きな帽子があるから目だっていいが・・・・・。  

大体、コイツは人込みに飲まれ易い。  
大勢の人の中で ぶつかる事を気にするあまり、方向性を失って 流されて行ってしまう。  
ホント不器用なヤツ・・・・。
後ろに並んでいたガキが ルキアを押しのけて前に行こうとしてるのに気付いた。
一瞬、突き飛ばされてフラついたルキアの肩をしっかりと掴まえた。  

ーーガキ!!  こんな人込みで転んだら どうしてくれるんだ!?

思わず、睨みつける俺。  
子供は泣きそうにな顔で後ろに下がった。

ーー悪りぃ。  けど、 てめぇが悪いんだぜ。  

「すまぬ、一護。  ・・・・・・・人が多いのは 苦手だ・・・・。」

ルキアが帽子を軽く抑えて、俺の服を掴んで見上げてくる。

「ま、入り口だけが 混んでるだけみたいだから、もう少し我慢しろ。」
「分かっておる。」

少し拗ねたように唇を尖らせて 顔を正面に向けた。

ーー予想通りの反応だな・・・・・・。  笑

俺たちは 入り口から キリン、ペンギン、オットセイ、白熊、フランミンゴ、象、犀、
カバを見た。

初めていろいろな動物を見たルキアは 驚きと喜びで表情をころころ変えてとても楽しそうだ。

ーー こんなに喜んでくれるとは・・・
   連れて来てよかったvvvv

「なんだ あの大きいのは ・・・・・・ きりん というのか?」
「一護、一護、 カバの汗は見えたか?  
 本当にピンクなのか?」

ただ、一つ。  
この発言は勘弁してくれ。

「あれは カバのオスか?」
「はぁ?  ありゃ、犀だぜ。 
 なんでオスなんだよ?」
「・・・・え・・・?  
 本匠が言ったおったのだ。  
 動物園に行くのなら、オスメスの見分け方だと・・・・・。
 オスなら そそり立つモノがあると。 
 顔の真ん中にそそり立ってるであろう。」
「///////  ば、おまえ、本匠の言うことなんか聞いてンじゃねえよ!!」
「・・・・なぜだ・・・・?  
 一護、大丈夫か?  顔が赤いぞ。」

ーー ルキアの口から『そそり立つ』とかは 止めてくれ!!
   本匠、頼むから お前のエロワールドにルキアを巻き込むな!!

「暑いんだよ・・・ 夏だからな。」
「ふん、未熟者め。
 心頭滅却すれば、火もまた涼し という言葉を知らんのか?!」

ーー ちきしょ!!  誰の所為だと・・・・。
   けど。  こいつって、確かに汗かいてるところとか見たことねえ。

「・・・・・あ、一護。 アイスを売っておるぞvvvvvvv」
「はい?  
 お前、たった今 言ってた事と違うんじゃねぇか?」
「うるさい。  よいであろう。 
 今日の私は お金を持っているのだぞ。
 貴様にも 買ってやろう。」
「いや、俺はいい。」
「遠慮するな、一護。 
 浦原がくれたのだ、せっかくだから奢られるがよい。」

嬉しそうに大きな瞳を輝かせてわくわくと買い物に行きたそうにルキアが俺を見上げる。

ーー あぁ、そういえば 入場券も金を払うとか言い出してたっけ・・・・。
   あの時は 流石に入場券は買い方 っつうか、言い方が分からなかったから諦めたが、
   売店のアイスくらいなら、ルキアでも買いに行けそうだもんな。

「じゃ、冷たい缶コーヒー 頼むわ。」
「よし、わかった。
 貴様はそこのベンチに座って大人しく待っておるのだぞ! 
 私が一人で買ってくるからな!」

その言い方は偉そうでひっかかるが、小走りで嬉しそうに売店に向かうルキアはまるで 
『一人で初めてのお使い』に行く ガキ みたいだ。
俺は 言われた通り木陰のベンチに腰掛け、ルキアの姿を目で追う。

「一護、鼻の下が伸びておるぞ。」
「夜一さん!?」

聞きなれた声に見上げれば、木の上に黒猫姿の夜一さんがいた。

「な・・・なんで こんなとこにいんだよ?!」
「なにを慌てておる。  相変わらず霊圧が読めぬ忙しない男じゃのぉ。
 あの嬢ちゃんも 死神としてはしっかりしているようじゃが、普段は白哉や周りに
 甘やかされてどことなく幼いままでかわいいのぉ・・・・・・。」 

そう言って、黒猫が満足そうに目を細めた。

「いいから、なんでこんなとこに居るのか教えてくれよ。 
 あんたって、そんなに暇な人じゃねえだろ?  なんかあったのか?」

「ふ・・・む。  喜助からの伝言じゃ。 
 あの嬢ちゃんの義骸は かなり特別製らしいの。
 多分 技術開発局に 相当な金を払って白哉が作らせた特注品だろうって話だ。
 かなり精巧に作られているらしい。」
「白哉らしい話だな。   ・・・・・で?」
「ばかもの!  精巧精密って事は 裏を返せば、あまり頑丈、単純じゃないってことだ。
 つまりは、壊れやすいってことだ。
 特にあれは 魂魄と義骸の接続が 密になっているから、義骸の中からの霊力の発動が
 し易い反面、外からの衝撃を中に伝え易いという欠点になっておる。
 2.3日内に外からの衝撃を緩和するサスペンションのようなものを開発するから、
 その間、あの義骸が あまり強い衝撃を外から受けないようにしてくれって伝言だ。
 今日のように暑い劣悪な環境下に長時間 居ないようにしてくれ とも 言っておった。」
「なんだよ、それ。  まるでどっかのお嬢様の取り扱いみたいじゃねえかよ。」
「まぁ、尸魂界でなら 正真正銘のお嬢様だからな。
 だが、本人にもその自覚は 薄いようじゃがの。
 前回 倒れた時に喜助が 同じ事を注意したみたいじゃが、あの嬢はあまり気にして
 ないようだったゆえ、お主に注意してくれってことじゃ。
 喜助も少し心配性なんじゃないかと思うが、わしにわざわざ伝言を頼むほど重大な事
 ともいえる。
 とにかく気を付けてやってくれ、よいな?」
「ああ。」

そう浦原さんからの伝言を言ってしまうと、文字通り気紛れな猫のようにフラッと行って
しまった。

ーー なんだよ、それ・・・・。
   ルキアのやつ、俺にそんな事 一言も言ってない。 
   ただ、
   『ーーー兄様は すごいな。  
    前回、浦原に貰った義骸がだんだんと動きが悪くなって、戦闘中に少し苦労した
    などという私の話を憶えていて下さったのだ!』
    俺はそんな兄自慢しか聞いてねえ!!





  一護誕生日 おめでとうvvvvv なんか、サラッとした話のはずがちょっと重たくなって しまった気がします。 July.15.2008 TOP