清家信恒
清家信恒
白哉様より
「緋真様の妹らしき者を見つけたゆえ 私(清家信恒)が会って話を
聞いてくる様に」と
申し遣ったのは 昨年初春に緋真様を葬送してからやっと一年余り経った
梅の木々が青々とした果実を付ける頃の事でした。
以前より白哉様が
『緋真の妹を見つけた暁には、朽木家に引き取るやもしれぬ。』
と、私には 仰っていらしたので 妹君に会いに行く私の胸中はとても
複雑でした。
妹君がいると伺った場所は真央霊術院の医務室でした。
お身体がお丈夫ではなかった緋真さまのようにお体の弱い方なのだろうか。
そんな方をお引取りになっては 白哉様のご心痛が増すのではないか。
なによりも気にかかったのは、78区 戌吊などで育ち、さらに
生き残る事が出来た娘など、緋真様とは違いどのように性悪でアバズレかも
分からないような娘でも この名門朽木家にお引き取りになるおつもりなの
だろうか。
一族にとっての大事を私が見聞きして報告する事を何故白哉様は望まれたのか
そんな事を憂慮しながら私はご指示のあった医務室の扉を開けました。
奥の障子に囲まれた小さな部屋の中の一組の布団の上に小さな少女が
そう、そこには 白い相貌に艶やかな黒髪の緋真様が静かに寝て
いらっしゃいました。
いえ、そう私がそのように錯覚してしまうほどによく似た けれど、
よく見れば生前の緋真様より二回りほども幼いお姿の少女が横たわって
おりました。
これでは緋真様の妹君であることに疑いようがありません。
また、これほど似ていては未だに沈んでいらっしゃる
(もちろん他の者からは分からないことですが、)
白哉様の胸中は如何ばかりかと察して余りあるものがございました。
それにしても なぜ あれほど緋真様が探していらした方、心残りとして
いた方が、緋真様の生前には見つける事ができなかったというのに。
朽木家のお庭番衆も使って戌吊中お探し申し上げても見つける事が
出来なかったので 最早 ご生存はないと諦めていたというのに・・・。
今までどうしていらしたのか・・・・。
(どこかで手抜かりがあったのだろうか、事と次第によっては白哉様に
顔向けができませぬな・・。)
私は少女の寝顔から目を離し、先ほどより後ろに控えて、私からの言葉を
待つ朽木家の主治医にようやく顔を向けて問いかけた。
「ご苦労であった。
診察は済ませられたようじゃが、如何でありましたかな?」
「はい。ご病気やお怪我もなく健康面でのご心配は、ございません。
異性をご存知ではない様子ですので素行面でのご懸念もご無用かと
思われます。
また、緋真様の魂魄との適合率は 92質率とまずご姉妹であることは
ほぼ間違い無いかと思われます。」
「・・ふむ・・ほぼ・・・と、申されたか? どういう意味ですかな?」
「はい、そう申し上げますのも お育ちの環境がお悪かったのか、
以前にお聞きしていたご年齢よりもあまりに御発育、御発達状況が遅く
幼くいらっしゃいまして。
その・・・まだ御身体が女性化していらっしゃいません。」
「つまり、まだ子供のままであるということか?
このお年で・・・?」
(しかも異性を知らずとは もしかしたら、戌吊ではない場所でお育ち
なのではないか。
だから、朽木家のお庭番衆が見つけられなかったのではないか。
魂魄の適合率とお姿には 全く申し分ない方なのに、お年が合わないような
事態になっているのは どういうことだろうか。
ただ、保身のために 性分化しなかったとでもいうのか。
どちらにしても少しでも話の食い違いが あるのなら 慎重に事に当たら
ねばなるまいな。)
「はい。
そんなお方でしたので本日のような時に 白哉様にお助け頂けたのは
本当に幸いなことでした。」
「それは どういう意味ですかな?
なにか御身に白哉様が助けねば
ならぬような事があったという事ですかな?
まだ、私に 報告されてない事実が あるという事ですな?」
一陣の風と共に朽木家のお庭番衆の長 蜘蛛頭叢吾が 片膝を
折って二人の前に現れた。
「僭越ながら 清家様。
そのことについて 主人より申し付かって参りました拙が 詳しくご説明
申し上げます。」
戌吊に続いて、適当な名前の人たちが 出まくりです。
12/10/2007
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