理吉3 棘



(・・・・・・・・やっぱりな。)
俺は やっと確認した 

ずっと昔に自分自身で結論付けていたにも関わらず、胸の奥深くで
ちりちりと刺さったままの小さな棘

やっと抜けたーーー



ルキアが 現世に単独駐在任務に出てから、一ヶ月経った。

その間に俺の六番隊副官としての正式の任官式があり、 俺は六番隊の
朽木白夜隊長の元で働いていた。
正直、十一番隊の更木剣八隊とは 雰囲気も仕事に対する姿勢も全く
違うため、戸惑いや不安はあったものの、よく草鹿やちる副隊長の手伝い
(いや、手伝いじゃねえ! 書類関係は副隊長の仕事そのもの)を
させられていたために仕事自体はよく分かっていたし、この隊は基本に
忠実なのでやり方さえ分かれば、逆に仕事自体は分かりやすかった。
また、合同演習などで俺を認めてくれ、俺を副隊長に推薦してくれた
元副隊長で今は眼鏡屋・銀蜻蛉を営む 銀(しろがね)さんが内々に
声かけしてくれてたみたいで、演習時に親しくした3席の犀川や
4席の青梅もよく助けてくれたので六番隊の居心地は 移動前に
心配したほどには悪くなかった。

隊長は 必要最低限の事しか口にしないし、表情も変わらないため、
すげえ分かり難い。  
そのため、ルキアじゃないが、一緒にいると異様な緊張感を強いられて
めちゃめちゃ疲れる。
(以前、アイツがいつも暗い顔をしていた理由がよく分かった。)

しかし、しばらくすると、この人は基本的な事を厳しく求めるけれども、
それ以上何かを求めている訳ではないと分かると 必要以上に力の
入っていた肩の力が抜けて仕事の配分や隊長に対する付き合い方もあまり
難しく考えずに出来るようになった。




そうしてそのうちに隊長と俺は お互いに一つの事柄に心を囚われて
いる事に気付く・・・・・。

空座町って現世に一ヶ月の単独駐在任務に出たルキアがもう予定を
二週間過ぎても戻って来ないって事だ。
真面目なアイツが 現世で遊んでいて遅れているなんて事は有り得ない。

(他の死神なら、こういう事が無い訳じゃない。
 もっともせいぜい3日の遅れだがな・・・・。) 

伝令神機から送られて来る虚を指令どおりに倒しているようなので
無事でいるようなのだが、穿界門を開錠して戻って来ない。
連絡もなければ、行方が分からないという始末だ。
虚を倒しているって事は 職務を放棄した訳ではない。 
伝令神機通りにってことは連絡しようと思えば出来るはずなんだ。 
霊力を探れば、隠密機動にだって捜せねぇ訳がねえんだ。

全く訳が分からねえ。 いったい何があったというのか・・・・!?



そうして、ルキア行方不明から一ヶ月経ち、俺(たぶん隊長も)の
心配が ピークに達した頃に映像庁と隠密機動が義骸に入ったルキアを
見つけたと連絡があった。


[四十六室より指令
行方不明及び重禍違反者・人間への死神能力の譲渡 
東梢局 十三番隊朽木ルキアを捕らえよ。 
さもなくば 殺せ。]
という指令と共に。

とにかく、無事に見つかって 良かった。
罪に問われちゃいるが、こんなのは 理由如何でどうとでもなる。
大体あのルキアの事だ。 それなりの理由がある筈だからな。
それに『朽木』隊長も付いている。 
義骸に入っているって話みたいだが、とりあえず無事に尸魂界に連れ戻す
事さえ出来ればそんなんどうだっていい。


俺と隊長・・・六番隊の隊長と副隊長が揃ってわざわざ 十三番隊の
平隊士を迎えに行くって事に違和感を感じねえ訳じゃなかったが、
とりあえずさんざん俺達に心配かけたんだ。

必ず、捜し出して 『ガツン』っと 言ってやる!!



「見ィーーーつーけた!」

明るい満月の下 アイツは すぐに見つかった。
(隠密機動のヤツラ 使えねえな。
 こんなに簡単に見つかるじゃねえか!!)
何処に向かっているのか・・・ホントに義骸に入ってだた走っていた。 

ーー俺たちに気付きもしねえでーー

しかし、俺は そのルキアの姿を間近に観た時、戸惑いと信じられない
気持ちと怒りで 気が付いた時にルキアに激しく斬りつけていた。 

ルキア本来の霊力が かなり失われているのにその義骸に纏わり付いて
いるのは ルキアと違う”男”の霊力。

これでは 隠密機動のヤツラが見つけられねぇのも当たり前だ。 
俺と隊長だから、わずかな霊力でもルキアを見つけられたが、これだけ
他人の霊力を纏っていたら、普通はわからねえ!!

だが、それより何よりルキアが たった二ヶ月現世に下りた間に!
さんざん 俺等に心配させてる間に!

人間の男とその義骸で霊力をやり合う様なそういう関係になったって事が 
俺の感情のコントロールを狂わせて行く・・・・・。

ルキアの義骸の頬が切れた。 
だが、その流れた赤い血がよけいに俺を狂わせていく。

ルキアの霊力を奪った人間の男ーーー無理矢理奪ったに違いねぇ!!
ルキアが言わない・庇いだてする男ーーー
人間みたいな、昔のような笑顔にさせた男
絶対殺す!!
ルキアの霊力を奪い、俺からルキアを奪った男を!


だが、実際に現れたのは ただの人間の 『ガキ』 だった。
自分の霊力を御しきれねえような。
霊力が 溢れて刀の形さえ 抑えられずにいるような
あんなヤツの傍にいたら、そりゃ、義骸にアイツの霊力が纏わり付くだろう。
ルキアの反応を見ても 感情的に深く関わっていた感じじゃねえ・・・・

そうだ・・・・。
ルキアがそんなに早々に変わる訳がねえ。
けっ!  ルキアの霊力を取り戻してやるためにあのガキは殺す!


言葉で確認できないまま・・・・・・
ルキアを信じたい俺は 気持ちをとりあえずそう切り替えた・・・・




どうしてもルキアを激しく斬りつけた恋次の行動に 理由付けしたかったんです。 そのための捏造設定でした・・・・・ (霊力の譲渡:斬魄刀以外に性交があるという設定) すいません。 どうでもいいですけど、改めて 見返した6、7巻の 恋次って朽木隊長にかなり馴れ馴れしい 口の利き方していて吃驚です。 Feb.21/2008