祭 り @ 




ルキアから珍しく「来月の6日に祭りに行くことはできるか?!」と
伝令神機に誘いがあった。
俺は慌てて 『朽木隊長』の予定表を確認する。
やった!!  その日は隊長が出勤日だから 丸1日非番が取れる。


アイツは先々月から『祭りに行きたい!』と言っていたから俺は二つ返事で
快諾した。
もちろん例の『約束』っていう下心もあった。


  
だが・・・・ まさか
その祭りってのが現世での『空座高校の祭』とは思わなかった
井上織姫と連絡を取り合っていたらしく、
「今回 クラスで喫茶店を出すから もし都合がつくなら遊びに来てねvvvv」
って誘われたらしい。
義骸に浴衣姿で 懐かしい(?)空座高校に行く。

実際に来てみれば!!
だいたい 祭って言っても俺らの知ってる『祭』じゃねえし!!
『祭り』だと思って浴衣を着てきた俺等 2人は 当然のように目立っていた。
いや、俺は 別に目立つってのは この赤い髪と巨躯だからいつものことだが、

「なんだ、恋次!!  屋台とか並んで確かに『祭』のようだが、
 誰一人浴衣など着てはおらぬではないか!!」

ーー 勝手に『祭』を勘違いしたルキアが俺に逆切れしてくるのは勘弁してくれ。

淡い青に紫と白の桔梗が描かれた浴衣に紫の帯、赤紫の半襟と帯揚げ、帯締めを
したルキアはとても似合っていて綺麗なのだから、それでいいと俺は思うのだが、
ルキア本人は 目立つことが不本意なのか 『現世通』として浴衣を着てきた事を
失態だと思っているのか機嫌が悪い。

「一護、織姫達に会ったらすぐ帰るからな!!」

そう言って 俺の前を早足で歩いていく。

ーー ルキア!  せっかくの休日をそんな不機嫌に過ごさなくてもいいだろ?!
   ま、どうせなんか食えば すぐに機嫌は直るんだろうけど・・・・・・。
   しっかし、浴衣だから 小股でしか歩けねぇのに、そんなにせかせか
   歩いたら転ぶって!!  
   人も多いから危ねぇって!! 

俺は内心冷や冷やしながら、不機嫌なルキアの後ろをとりあえず黙って歩く。

「うあっ!!」
「ルキア!」

よそ見をしていた学生服の男にぶつかってコケそうになったルキアを俺は慌てて
後ろから抱きとめた。
一瞬相手はぶつかったルキアを睨んでくるが、すぐに後ろの俺に気付いて態度を
軟化させた。

「いてぇな!!  ・・・すみません。  大丈夫ですか?」

尸魂界でもそうだが、現世でも相手によって態度を変えるヤツがいる。

「おう、悪りぃな!」  「すまぬ。」

俺たちが謝ると 軽く会釈してソイツは 人ゴミに慌てて消えた。
俺は抱きとめたルキアをそっと立たせると、耐えていた言葉を吐き散らした。

「ルキア、てめ!  危ねえだろ!!
 いい加減、機嫌直せって。   
 べつに浴衣じゃないだけで変な恰好のヤツなんか山の様にいるじゃねえか?!
 あいつなんか 石田みたいに変な赤い布切れ背中にひらひらさせてるし、
 あの女たちなんて変わった服に耳や尻尾まで付けてる。
 だいたい その浴衣、お前に似合っていてとても綺麗だって!」

ーー あ! っと思ったときには遅かった。
   いつの間にか普段絶対言わねえような 恥ずかしい本音をほざいてた!
   頬が 耳が 熱い・・・・・・。

目の前のルキアの顔も見る見る赤くなった。
    
「いいから一護たちのとこに行くぞ!」

そう言って俺は先にたって歩き出した。  後ろに手を差し出しながら。

「馬鹿恋次!」

ルキアが俺の差し出した手に自分の手を重ねてくる。
その小さな手をしっかり握る。  

罵倒する言葉はいつもと同じなのに今日は嬉しそうに聞こえるのは俺の気の
せいではないだろう。

「うるせぇ!」

俺もいつものように返す。
二人歩く下駄音はさっきより軽快だ。







  「おかえりなさいませ、お嬢様、ご主人様。」 一護たちの教室では色とりどりのワンピースに白いフリルが沢山付いた エプロンの女子生徒と 制服に白い大きな前掛けを腰に巻いた男子生徒達が 食事や飲み物を 運んだり、卓上を片付けたりと  とても忙しく立ち働いていた。 どうやらとても盛況らしい。 その忙しい様子に入り口に立ちつくしていると井上が逸早く私たちに 気付いて嬉しそうに近寄ってくる。 「うわぁああ、おかりなさい、朽木さんvvvvv 恋次君vvvv  来てくれて嬉しいよぉvvvvv」 「うむ、丁度休みが取れたのだ。 久しぶりだな、井上。    相変わらず元気そうで私も嬉しいvvvvvvv」 「朽木さんも恋次君も元気そう。    あれ?  恋次君、なんか感じ変わった?  あ、髪を下ろして来たからか・・・・。    さすがに二人とも浴衣を着慣れていて すっごくカッコイイねvvvvv」 「何を言う、井上達こそ すごく可愛いい衣服ではないか。  お、一護。   久しぶりだな。  貴様に奢ってもらいに来たぞvvvvvv」 「なんだ、おまえら?!  わざわざ来たのかよ・・・・」 客に水を運び終わった俺は 3人に気付いて、ゆっくりと近づいていく。 そんな俺にルキアがとても嬉そうに笑いかけてくる。 久々に姿を見せたルキアと恋次に嬉しいはずなのに 揃って浴衣姿で現れた2人に 俺の胸に言いようのない苛立ちに似た ざらっとした感情が起こる。 ーー いやいや、ルキアは確かに似合っていてかわいいけど。    恋次はどう見てもヤクザの若頭かなんかだろう。    どう控え目に見ても堅気には絶対見えねぇって!!    記憶を消去されていない俺達以外のクラス連中は ドン引きしてるって。 井上の言葉に思わず 心中でツッコミを入れる。 「ルキア、てめ  久しぶりに会ったってのに第一声からずいぶんな挨拶じゃねえか!!」 「おぉ、一護。   男の癖に小さいことを気にするな!  貴様の衣装もなにやらとても格好良いではないか?!」 「///////うるせえ!  だし、学生にたかるんじゃねえよ!」 嬉しそうな笑顔のルキアにつられて笑う俺の顔が 恋次の井上に話した言葉を 耳にして途中で引きつった。    「/////   ルキアが誕生日にくれた浴衣なんだぜ。  (自慢気♪)」  ーー そこのやくざの若頭、てめ 今なんつった?! 「よお、久しぶりだな。  若頭。」 「はぁ、一護?!  『若頭』ってなぁ なんだよ?!     なんかしらねえがムカつくいい様だな。    てめ 会う早々、いきなり喧嘩売ってんのか?!」 2人胸倉をつかみ合って 額を突き合せている。 「ーーあ!  そうだ、朽木さんvvvv   ちょっとこっち来てくれる?」 「・・・ぅん?」 「ちょ、ちょっと待って、井上さん!  どこに行くの?」 石田が ガヤガヤと忙しかった店内にいきなり流れ出した不穏な霊圧に気付いて、 詳しい状況は不明でも 今、井上と朽木さんが教室から出て行くのはマズイと思い、 慌てて井上を制止した。  「すぐ戻るから ちょっとの間、お願いねvvvvv」 「え・・・ちょ 井上さん・・・・」 無邪気なかわいらしい笑顔でそう返されては 強く引き止められなかった。 だが、今、井上さんが言った「お願い」は たぶん 「店」を抜ける自分の 穴埋めのことだ。 なにか目先の考えに一杯で 入り口でぐりぐりと額を突き合せている一触即発の 2人なんて 全く眼中にはない感じだった。 そうして 唯一 アノ2人を簡単に止める事が出来そうな朽木さんを教室から 連れて出ていってしまった。 ーー 滅却師の僕には 霊圧を駄々漏れに溢れさせている2人はかなり    ウザイんですけど、茶渡君の2人でなんとかしろってことですか、    井上さん・・・・・・・?! 同じく騒ぎに気付いて成り行きを黙って見ていた茶渡君と僕は顔を見合わせて 大きな溜息を吐いた。 とりあえず、今のところはぐりぐりと額を突き合せて どうでもいいような くだらないことを口喧嘩で言い争っている黒崎と阿散井を教室の入り口から 2人でなんとか移動させるしかない。 ーー ここままでは はっきり言って邪魔で営業妨害だ!!    井上さん。  頼むから、朽木さんを連れて早く戻ってくれよ。  

時系列上は「新人β」と「ある日」の続きですvvv。 内容的にはあまりリンクしないと思います。 **『お話部屋』「祭り」と『一護部屋』「空座高祭」は    設定はほぼ同じですが、全くの別話です。 TOP