兄ーー白哉 私には真に家族と呼べるのは緋真だけだったーー 最愛の緋真を失った時 朽木という責務を負う抜け殻になってしまった そんな時に初めて”兄”と呼ぶ家族 ルキアが現われた。 緋真の分まで愛さなくてはならない 緋真の分まで守ってやろう 緋真の分まで幸せにしてやろう 最初はそんな義務の気持ちだけが私を動かしていた 緋真の”死”を忘れられない私の前にーーーそっくりな、緋真の姿を真似ておきながらーー 同じでははないと主張するーーその細さも 笑顔も 動作も 幼さ 性格すら 全く違うと 緋真ではないのだと 緋真はもういないのだと私に見せつける。 そうしてやっと癒え始めた 緋真の喪失感をさらに抉り、思い知らせる ーーなのに 時として同じ癖 仕草をして見せるのだ。 同じモノを好んで 愛おしんで見せるのだ。 私はそんなルキアを見ていたいのに 見る辛さから目を逸らしーー知らず拒絶していた。 何度も何度もーーーそんな私の態度がルキアを傷付けていることは知っていた。 だが、私は ーーあの娘が朽木家・当主に大事にされていると世間に知れれば、 ハイエナどもが寄って集って食い殺されてしまうよりは・・・。 むしろこのままの素っ気無いほうが娘のためだと自分に言い訳して知らぬ顔をしていた。 緋真のよりも華奢で幼い娘・ルキアは私を呼ぶーー何度も何度も ”兄様” ”にいさま” ”ニイサマ” ”白哉兄様” ”白哉にいさま” ”白哉ニイサマ” ”びゃくやにいさま” 凛とした声で 背筋を質して 確認するように 縋るように 求めるように 遠慮するように 躊躇うように 甘えるように 時に緋真によく似た声で・・・・ そんなルキアをどうして愛さずにいられるだろうーー だが、私は義兄として どう愛していいのか 愛情の示し方が分からなかった ーー危険から守ってやる 危険から遠ざけること以外どうすればいいのか分からなかった そうしてルキアはいつしか私を求めることを諦め・・・・ 心を閉ざしてしまった ただ私を畏怖して 萎縮するようになり、笑顔すら失くしてしまった 反比例するように浮竹を頼り、志波海燕を慕い 笑顔を向けるようになっていった ハイエナの餌食にならないのだからこれでいいのだーーと己を納得させる。 口惜しいほど愛しく大事に想っているというのにーー
拍手ありがとうございました! あとがき Oct.26 〜 Nov.19.2009