遊園地 その日、俺達は学祭の代休を利用して遊園地に来ていた。 面子はいつもとあんま変わらないーーたつき、織姫、石田、啓吾、小島、ルキアと俺。 茶渡は遊園地が苦手だし、バンドがあるからって来なかった。 正直、俺も人が多いような場所は行きたくなかったのだが、とりあえず平日で空いてる だろうってことと 何よりルキアがわくわくととても楽しみにしていたのでーー仕方ない。 挿絵PC用 挿絵携帯用 「貴様、一護 逃げるな!!」 「ちょ、ルキア、別に逃げてねぇだろ?! ガチ人聞き悪いってーー」 俺がセリフを言い終わる前にルキアに腕を掴まれ、いや、しがみつかれていた。 ここ(遊園地のお化け屋敷)に入る前に俺がルキアを揶揄(からか)って言った 「置いて行くからな!」ってセリフをマジ受けしてんじゃねぇって。 「っだぁーーー! 歩きにくいー」(しがみつくな!!) 振り向いて覗いたルキアの顔に その必死な瞳に後半の言葉を飲み込んだ。 (てめ、死神の癖にその顔はねぇだろ?! 俺よりずっと年上のくせにーーーたまにこんなにもガキなルキアに戸惑うーー 顔がーーその大きな瞳が いつもよりすっげぇ近いってーー 腕に何かあたってるってーーー) 「うわっ!! 貴様等ナンだ!? 何が楽しいのか分からぬ!!」 数々の仕掛けや仕掛け人に うわっ うぎゃっ やめろっ って大騒ぎして 狙い通りにことごとく驚くルキア ーーー半分涙目なんですけどーー 「訳も無く驚かしてくる意味が分からぬ!!」 何度も驚かされて 最後にそう叫んでルキアが俺にしがみ付いたまま足を止めた。 ノリノリでーー絶妙のタイミングでルキアを狙い撃ちしてくる仕掛け人達に だんだんとルキアがイライラと怒りを募らせていたのは知っていた。 ぶっちゃけ、これだけいい反応されたらーーそりゃあ驚かす方は楽しくて 堪らないだろう!! ここでのルキアはーー上客ーーいい鴨だから!! だが、ルキアがぶつぶつと小声で言っているのが聞こえて 「ーーーー象羽博き・ヒトの名を冠す者よ。真理と節制・罪知らぬ夢のーー」 「っちょ、 ルキア、ソレって蒼火墜じゃねぇか?! 落ち着けって!!」 口を押さえて抱き締める。 気持ちは分かるがーーーお化け屋敷内のお化け(虚じゃない)を倒すのは絶っ対 マズイって!! ーー入る前にしつこく言い聞かせただろうが!! 今まで反射的に”敵”として倒してたようなヤツラに驚かされるだけ驚かされて、 倒せないストレスから 半分キレかかっているルキアを抱き締める。 「とにかく落ち着けって・・・・ 生きてる人間相手に蒼火墜は止めろって。 ルキア、大丈夫だから・・・・な。 落ち着けってーーー」 なんとか怒りを収めようと抱き締めて背中を撫でて宥めるーー 「一護、あんまりイチャつくなよ!! ここはカップル泣かせな場所だって有名だかんなーーー。 イチャついてるカップルには厳しいって聞いてるからなーー」 ふと、啓吾がそんなコトを言っていたのを思い出すーー。 傍目(はため)には今の俺らってイチャついているようにしか見えねぇんだろうなーー そう思ったら少し顔が火照って身体が熱いーー腕の中の華奢なルキアを意識する。 今、ルキアが大人しく抱かれているのは落ち着こうとしているからだ。 ある意味日常には無い すっげぇ美味しい位置には居るかもしれない。 だが、ここってたぶん お化け屋敷の中のまだ半分くらいの位置だと思う。 深い溜息が出た。 俺が飲み物を買いに行っている間に「お化け屋敷」がすっごく面白いってルキアを 唆した啓吾達を少し怨んだ。
あとがき