神薙祭




「ルキア様、この「朽木家」は祭祀を司る「家」なのです。」

ある日 清家信恒に呼ばれて改めて尸魂界における「朽木家」の役割を教えられた。

「死神をされている貴女様には5年や12年に一度の大祭以外はほとんど御臨席を
 お願いする事はほとんどございませんでしたが、年に幾つかの小さな祭祀も
 執り行っいるのですよ。」

清家がこほんと一つ咳払いをして 神妙な顔をして話しを始めた。

「中でも27年に一度の『神薙祭』は特別なのです。」

私がこの「朽木家」に養子となって二度目となる『神薙祭』ーー
以前は何も聞かされずにいた『神薙祭』について説明された。

「神薙祭とは 過去に行方不明や殉職した高位死神が持っていた斬魄刀を封印・
 保管しておいて 27年に一度纏めてその供養を行う神事です。
 ここまではご存知ですね?   ルキア様。」
「はい。」

清家信恒と向き合って二人だけで話すこの部屋は強い結界が張られていた。
嫌が応にも緊張感が強いられて 言葉数が減る。

「一般には一切知らされることの無い完全な秘祭なのです。
 毎回、場所も時間も吉凶を占って決められるので違う場所で執り行われます。
 幾重にも結界を張って外部からの侵入も内部からの漏洩も一切無いようにされます。
 参加・関係者も最上位貴族の一部、今は無い四十六室内でも一部の者に直前にしか
 知らされません。
 東梢局でも総隊長と二番隊隊長の刑軍の長と刑軍の一部だけです。
 朽木家でも上位の蜘蛛しか知らされず 完全厳戒態勢で執り行われるのです。」

顔を伏せて聞いていた私を清家が言葉を切って 瞳を合わせてから話を続けた。

「何故そんな秘密裏に執り行う必要があると思われますか?
 何十本とある主を失った斬魄刀の中には 貴重な名刀が多く、名声を望んで欲する者や
 故人を悼むあまりに手元に残そうと思う者から守るためです。
 霊力の合わぬ者が持てば、斬魄刀は制御できずに暴走することもあるので大事な事です。
 供養して 神の御元にお返しして、次の正当な持ち主が現われるのを待つのです。
 そして 何より重要なのは 刀神・天叢雲剣様と大神・霊王様が御臨席される事。
 これこそが秘中の秘たる所以です。
 神事を知る者の中には大神にお会いできれば、なんでも願いが叶うと思っているけしからん
 痴れ者もいるのです。
 昔からまことしやかに流布される噂、伝説の類ですが、王族特務も警備しているのに
 お会いできる道理もないのに愚かなことです!」

清家の最後の言葉の否定の強さに少し驚いた。

ーーもしかしたら、兄様は清家に話されていないのかもしれない。
  この調子では確かに話をしても信じてはもらえそうにないし、何の話をしたのか
  しなくては収まるまい。

兄様の苦々しい表情を思って私も口を噤むことにした。