黒崎家


「お兄ちゃん、ルキアちゃんは?」

「一兄ぃ、ルキ姉 知らない?」

ルキアが 家に公然と居候するようになってそろそろ一年。
俺は こんな風にルキアがどこかって質問を妹達から よく受けている事に気が付いた。

「なぁさ。 お前たちはなんで俺がいつもルキアの行き先を知ってると思うんだよ?」

ある日、思わず聞き返したら、妹達からすごく驚いたような反応が返ってきた。

「えぇ〜〜?! 
 だって・・・ だいたい一兄に聞いて『知らない』って返事されたことないし。」

「そうだよ、ルキアちゃんも私たちが居る時には、私たちにも言うけど、そうじゃなきゃ必ず
 おにいちゃんには行き先を言って出掛けてるよ。」

「そうそう!  それにホントに一兄の言った場所にルキ姉居るし!!」

ーー う・・・・。  
   聞かれれば、俺も気になって つい知らないうちに霊圧感知をしてた・・・ かも。

そうして、その度に学校の用事でまだ学校に居るはずとか、浦原の店や井上達と買い物に
行ったと妹たちに伝えていた。   ・・・・lllllorz







虚圏での藍染惣右介の討伐後、山本総隊長の命令でルキアは『現世の体験報告』っていう訳が
分からない特別任務に就いていた。  
俺に言わせりゃ、かなりフザケタ任務だと思うが ルキアの滞在(居候)が延びて 
うちの家族は大喜びだ。

そのため今回は 白哉が正式にオヤジに挨拶に来た。
(本当は学校近くのマンションを買って住まわせるつもりだったらしいが、
 あのルキアに一人暮らしは無理。
 尸魂界の朽木家の付き人なんかも現世では頼りになる訳ないので断念。  
 他の選択肢、例えば 浦原商店よりはマシって態で俺の家の居候を認めたらしい。 
  失礼な話だ!)

今回の設定は「良家の子女の家出」って事で今までの居候中の迷惑の謝罪と今後、
月に3日ほど帰宅するって条件で引き続き居候の依頼をしていった。

そんないい加減な設定を二つ返事で呑んだオヤジはいつものことだが、任務とはいえ、
あの白哉がうちのオヤジに頭を下げていったってのは すげえ。

白哉のヤツ、俺にはめっちゃプレッシャー(霊圧)をかけていった。

「ルキアを傷つけたら赦さぬぞ、黒崎!!」

ーー ってよく言うぜ!!   
   だが、ルキアを本当に想っているってことは伝わった。







「・・・・そういえば・・・、今日からルキアちゃん・・
 お家にお泊りに帰っちゃったんだよね。」

そう寂しそうに柚子がぽつりと言った。

「そうだ!! 
 ねぇ 今日はルキ姉がいないから、キムチ鍋にしようぜ!
 へへへ・・・・、ホント、ルキ姉ってば、辛いの苦手だよね・・・
 前に試しにキムチ食べさせた時、すっごい大変だったじゃん!! 
 ははははは・・・・」

「かりんちゃん! 
 あれは笑いごとじゃなかったでしょ。 
 すごくムセちゃって咳が止まらなくなって とっても可哀相だったじゃない。」

「なんだよ、柚子。 
 今だから笑えるんじゃン。 
 ね、いいじゃん、キムチ鍋にしよ!」

「そうだねvvvvvv  ふふふ・・・
 ルキアちゃん 最後には泣いちゃって、おにいちゃんが
 すっごく慌てておろおろしてたね・・・・・。」

「ばっ!!  俺はべつに おろおろなんてしてなかった!  
 ・・・・ちょっと驚いただけで・・・・」

「そうそう! 
 一兄ってば めっちゃくちゃ慌てて、持って来た水をこぼしてた!!」

「//////    
 ・・・・・んで、ホントにキムチ鍋にするなら、材料どうするんだ?  
 キムチと豆乳 それ以外に何を買ってくりゃいいのか?」

「え、お兄ちゃん買い物行ってきてくれるの?  
 えっとぉ・・・・、鍋の材料は揃ってるから・・。
 あ、練りゴマがちょっとしかなかったから、お願いします。」


俺はルキアが居ない時、この家の中にある種、欠落感があることにも気がついていた。
なんとなく妹達も 態度が落ち着かないっていうか、カラ元気のように不自然になる。
アイツがこの家で皆に認められて暮らすようになってまだ一年しか経ってないって
言うのにしっかり家族の一人としてかけがえのない存在になっているのを思い知らされる。


アイツは 自分が無器用な所為か ホントに色々なことによく気が付いて感心、感謝する。
俺ら 長く暮らした家族でも 気が付かなかったことに。

例えば、柚子の料理・・・・ 
一見いつもの料理なのに 前より生姜入って美味しくなっているとか、野菜の切り方とか、
柚子が その料理で工夫したちょっとした事をしっかり言い当てる。

夏梨の手際の良さ、機転、細かい心配りを気付いたのもルキアだった・・・ 
夕方俺らが帰る頃に必ず玄関灯を点けておいてくれるとか、玄関や庭の掃除、野や庭の花を
玄関、トイレ、食卓に活けていた事とか。 

日常のちょっとした事。  
見過ごされがちななんでもない事。
そんな事に気付いて 笑顔と共に感謝する。

オヤジにだってそうだ。 
あんなウザいおやじに普段俺らが思っていても絶対口にしない 
「ありがとうございます。」や「お仕事 お疲れ様です。」って 
さらっと感謝を込めて真面目に伝える。
いつものオヤジなら茶化して笑い飛ばすところを アイツの言葉に
マジ照れして「おう!」って自分の部屋に逃げ込んでいく。

そんなルキアが 月に一度 山本総隊長に『現世の生活』を報告するために尸魂界の
朽木家に戻ってしまう3日間、少し元気がなくなる柚子のためにオヤジも夏梨も
変にハイテンションになって困る。
おやじなんて 俺への絡みが激しくなって めちゃめちゃうぜえ!!



「かりんちゃん。
 お兄ちゃんってば、今日は部屋に閉じこもらないで買い物に行ってくれたね。」

「一兄ってば、わっかりやす過ぎ!! 
 ルキ姉居ないと元気なくて ホントうざい!!」

「・・・かりんちゃん・・・・  うざいっていうのは酷いよ。」

「だって!  
 寂しいのはみんな一緒なのに 一兄ってば、いつも以上に無口になって
 眉間の皺が増えて ただでさえ怖い顔をもっと怖い顔にさせてるんだぜ。
 また、本人がそれを自覚してないから・・・・。
 この間なんて アンタの友達ビビって泣いてたじゃん。」

「うん。  あれは困ったな・・・・。   
 うちのお兄ちゃん、ホントはすっごくやさしいんだよって言っても
 もう聞いてくれなかったし・・・。
 ルキ姉が居ない時に 友達呼んじゃダメだったね。」

「だから!!  そういうとこがうざいんだって!」

「もういいよ。  たった3日間の辛抱だし。」

「私らだって、我慢してるんだから、一兄ももう少し普通に暮らして欲しい。」

「しょうがないよ。  ルキアちゃんが居ないんだもん。」

「・・・・・・ あ〜〜ぁ、ルキ姉 早く帰ってきたりしないかなぁ。」

「・・・・・そうだね。」




黒崎家での「ルキアの居ないある日」のひとコマでした。 (虚圏後の勝手な設定です。) ルキアってば、『黒崎家』でも愛されてるといい。 一護は 妹達にまで いろいろ ダダ漏れ・・・ ってか  心配かけるなよって感じで。 Oct.03.2008〜Oct.19.2008 『やる気』の元 ありがとうございました! 感想など一言いただければ、とても嬉しいです。 今後の参考にさせていただきます。 TOP