『ヤル気の元』 ありがとうございます!

告 白 3 偶然にしろ、わざとにしろ 触れられると 過敏に熱を持つ肌に 熱くなる頬に どうしようもなく心乱され、動揺する自分に   ーー戸惑った なんなのだ、私は?!  今更・・・・  何で こんなにどぎまぎとしてうろたえなければならぬのだ?! 相手はあの 恋次 なのだぞ! 子供の頃から 触れ合うことなど当たり前に傍にいたアヤツに どうしてこんなに狼狽せねばならぬ! そんな私に気付くとさらに わざと触れて 抱き締めてくる恋次の 意地の悪さに その笑みに 動揺のあまり ある日思わず殴り倒した。 「私に触れるな、馬鹿!!  ・・・・も・もう、しばらく貴様とは会わぬ!!」  驚いて私を見上げている恋次にそう宣言して すたすたと朽木の邸内に帰ったのは10日前のこと。 その後、私はヤツに会うのを避けるために 明け方の早い時刻に隊に向かい 日中は隊舎執務室に籠もり、 副隊長である多忙なアヤツは退出できないような早い時間に自宅に戻る。 その間 ずっとヤツからの伝令神機への連絡を無視していた。  今日という非番の日も 本来なら恋次に会って、買い物と食事をする予定だったが、 一人自室で鬼道の手引き書を開いていた。 こうして過ごす事で・・・・心の平穏を保とうとした。 心を乱す アヤツが傍にいて触れる事もなくなり 意地の悪さに怒ったりする事も 声を聞くことも偶然遭う事すらなくなったのだから! 鬼道の勉強や仕事が今まで以上に集中することが出来て、 効率も上がる! ・・・・・筈だったのだ。 だが、この10日間の私は 周囲が驚くほどの凡ミスを幾つもした挙句 「どうしたの、朽木さん? 何かを思い悩んでいる事があるの?」 「大丈夫か?  何でも相談していいんだぞ?」  勇音殿や小椿殿に心配をおかけしてそんな質問されるほど ぼんやりと考えている事が多かった・・・・・・。 冗談ではないぞ!!    何故私がくよくよと思い悩まねばならぬのだ?! 何であの馬鹿のことなどこんなに考えねばならぬ?! しかもたかが10日だ! 過去・・・・ 話どころか満足に顔を合わすことの出来なかった 40年に比べればほんの短い間だ・・・・・。 それなのに・・・・・  なぜこんなにも会って触れられた時以上にくよくよと考えて心惑わされねば ならないのだ?! 殴ってしまった事 突然、「会わない!」 と宣言してしまった事 意地を張って ムキになって会わない事  「全て恋次が悪い!!」 最初のころはそう考えていた・・・・・・ だが、日が経つにつれて・・・・ 「会わない!」 ーー自分でそう望んだのに・・・・  このようにいつまでも会えないのは ーーもしかしたら・・・・・ 私が避けているから会えないのではなくて 恋次が会いに来ようと 会いたいとさえ思わぬからではないか?!   −−そう思い至る。 別に行き帰りだとて・・・・ 絶対に都合のつかない時間帯ってわけじゃない。 ましてや日中隊舎内に引篭もっているだけで、アヤツは他隊に邪魔できない なんて考慮して会いに来れぬような遠慮深い男では決してない!! 平気で自分を「殴り」、いつまでも 「子供じみた反応をする私」に 今まで 本気で私を怒ったことのない恋次が心底呆れたのではないのか?! 嫌いになったから会いに来ないのではないか?! そうでなければ 10日も会えない理由が思いつかなかった。 いや、・・・・ 忙しいのだ、きっと。 あれでもアヤツは副隊長なのだからーーー いや・・・・ もしかしたら飽いたのやもしれぬ・・・・・ ぐるぐると一人仕様もなく考えていた。 ・・・馬鹿・・・れん・・じ・・・ 何をしているのか・・・・・ !!あ・・・・・ 今頃、待ち合わせ場所で待っているやもしれぬ 私が来ぬと分かっていても・・・・ あの馬鹿はきっと・・・・・ そう思ったら、胸がきゅうっと縮んだように苦しくなって もうなんだか分からない感情に突き動かされて部屋から駆け出していた。 ーーてめーは いちいち難しく考えすぎなんだよ。 うるさい!!  貴様が悪いのだ!  貴様が意地悪く私をかき乱すから・・・・  このように意地を張ってしまうのだ たかが10日 会わなかっただけなのに 心が 身体が 魂魄が苦しく痛いほど求めてるのは何なんだろう? 母屋の長い渡り廊下の先に蜘蛛達が取り囲む中に赤い髪を見つける 蜘蛛達と何やら言い争っている・・・ 何だ?  わざわざ家まで迎えに来たというのか?!  予想外だーー  裏切られた予想に なんだか嬉しくなって顔が弛む。 そうだ・・・・昔とは違うのだ。 もはや護廷隊・副隊長となり 卍解できるほど霊力を持つ貴様は精霊廷内で 出入りできぬ場所などないのだな・・・。 冷静にそんなことを考えている頭とは別に気持ちはただただ嬉しくて 蜘蛛や侍従・侍女達の手前、逸る気持ちを抑えて 駆け出さないでいるのが精一杯。 「恋次」 呼びかけた名に こんな風に声に出して口にするのさえ久しぶりなのだと気付く。 胸がどきどきして 目の前の「恋次」と 「どうしよう」 って気持ちでいっぱいになる・・・。 「ルキア・・・・・!」 蜘蛛達が一斉に傅いて頭を下げて私を迎える。 拘束を解かれた恋次が 苛々とした怒気を含んで近づいてくる。 「ルキア、・・・・いい加減にしろよ!  こんなーー  !!」 無言で抱きついた私に恋次の言葉が止まる。 怒気を含んでいた霊圧が一瞬で霧散して 戸惑いと安堵の温かいものに変わる。 抱きついた腕で 寄せた頬が感じる胸の鼓動と 懐かしい香りに 抱き締め返された腕の力強さや 屈んで寄せる耳元の熱い声に 恋次の腕の中を実感する。  「ルキア・・・・・ルキア・・・てめ、ちきしょ  触るなって 俺を遠ざけやがったくせに」 「うるさい!  男が小さい事をぐちゃぐちゃ言うな!」 「!! ・・・・ 煩え爺さんが来た・・・話は後」「うわっ」 私を抱き上げると すぐに恋次が瞬歩で移動した。 こうなると腕を首に巻きつけてしっかりと掴まるしかないーー 久しぶりに触れる魂魄、体温が心地良い よく見れば、こやつ・・・恋次のくせに正装して来ていた・・・・・。 おかして可笑しくて嬉しくてくすくすとした笑いが止まらない。 なんだかくよくよとしていた10日間がもうどうでもよくなってしまった。 そう言ったら・・・・ きっと貴様は怒るのだろうな・・・・・。 「悪かったな・・・・・」 恋次の家に着いてすぐ私を抱き上げたまま視線を逸らしてぼそりと恋次がそう言った。 「お前が何を怒っているのか分からなかったから 日をおいて会いに行こうと  思っていたら、仕事が立て込んだ上に現世に行く羽目にまでなって  今日まで会いに行けなかった。」 真剣な顔で私を見つめると 耳元に左手を差込み瞳を捕らえて逃がさない。 「けどな、会わないって言うのは止めろ。  一緒にいても分からない事が離れたらもっと分からなくなるだろ。」 「・・・そうだな・・・・・私には分からない事が多すぎる・・・・・  貴様のことも・・自身の事すら・・・・・   だから教えろ、恋次。」 掴んだ袷を強く引いて私から口吻るーーいつもコヤツがするように何度もそっと触れ、 離れ際に唇を舐めてーー舌を絡めて 魂魄の熱を伝える。 耳元に口吻て 刺青に添って舌を這わせると肌を赤く火照らせて恋次の身体がびくりと反応した。 ーー面白くて嬉しくて   あぁ・・・・こういうことか・・・・と納得する。 意地悪く触れたくなる恋次の気持ちが分かった気がした。


あとがき ありがとうございました!