居酒屋 /タイトルを変更しました。/酒(Alcohol) 

「隊長の義妹のルキア様って 華奢で儚げで可愛いよな〜〜」 ーー見た目はそうかもしれねぇが、気が強くて儚げってのは全然ちげーよ! 「一昨日なんか、隊長に弁当を届けに来たりして 大貴族のお嬢様っていうより健気で  家庭的って感じですよね〜〜」 ーー家庭的?  アイツは相当不器用で     いや、俺も食ったが弁当のほとんどは朽木家の料理人が作ってたぞ・・・ 。 「その帰り際に頭を下げて微笑んでくれてさぁ・・・ 超可愛いかったぁ・・・・」 ーー・・・・・・・・・・・   そう、アイツの笑顔は可愛い!   ソレが作り笑いであったとしても!!   普段、隊長を見習うように表情を崩さないだけに 効果も絶大だ!! 「副隊長・・・?」 「副隊長!!  阿散井副隊長、僕らの話を聞いてるんですか?」 仕事後の居酒屋で交わされる雑談 副隊長として隊士達の話や悩みなどを聞いてやるのも仕事のうちーー だが、背後でルキアの噂をするヤツラがいては気になって  「どうしたら強くなれるか?」 なんてお決まりの新人の悩みなんて身を入れて聞けるわけがない! 「けどさぁ・・・・ 朽木家って言ったら やっぱ高嶺の花だよなぁ〜」 「しかも付き合ってる相手が日番谷隊長じゃぁ、争う気にもならないよなぁ〜」 「えぇっ、オレは十三番隊の新人とよく一緒に歩いているから ソイツと付き合ってるって  噂を聞いたぜ・・・・」 ーーどっちもちげーよ! 俺だって。 いきなり小声になって噂は続いた・・・・・ なんだ? 余計に聞き耳をたてて聞きたくなるだろうが・・・!! 「噂って言えば、うちの副隊長ってのもあったっけ・・・・・」 ここでどっと一斉に笑いが起こるーー 「あははははは・・・・」「がはははは・・・・・」 「はははは・・・・・」 ーー怒!! ーーてめーら!!  どういう意味だ、それ!?  怒鳴りつけたいのを堪えて拳を強く握る。 「(怯)ーーー副隊長?   どうしたんですか?  顔がすっごい恐いんですけど・・・・・」 「(怯)副隊長?!」 「阿散井副隊長ってば、なんでいっつもルキア様をあんなに怒らせちゃうんすかねぇ?」 「あ、オレも不思議に思ってた。  あんなに淑やかに微笑むような方が副隊長だけにはムキになってーー」 「でも 怒る姿も可愛いーー・・  あ・・・・」 「え・・・・?」 ーー本当の事を言いたい!!   聞き耳をたてた人の話に口を挟むのはだめだってわかっていても・・・・ 「恋次♪」 いきなり背後から抱きついて来たのは感じ慣れた霊圧 いつもとは違う上機嫌で浮かれた様子にーー 吐く息にかすかに酒の匂いが混じっているのを確認する 「ルキア、てめ また俺のいないところで酒飲んでんじゃねぇよ・・・・」 「ふふん 貴様だとて飲んでおるではないか!?」 「お前はーー  !!」 そこで能天気で屈託のない明るい声が響く 「あっばらい れっんじ〜〜vvvv    あんた、また説教たれてるのぉ〜〜  酒の席で説教するヤツは嫌われるんだからねぇ〜〜」 「乱菊さん、コイツに酒飲まさないでくださいって、この間ーー」 「私からお願いしたのだ!」 「なによぉ〜〜、朽木から誘ってきたのよぉ〜〜  だいたい仕事が早く終ったはずのあんたったら連絡がつかないじゃないのぉ〜」 慌てて懐から伝令神機を取り出し着信を確認する。 居酒屋の喧しさから気付けなかったのだろう、着歴が三件 ルキアから二件と乱菊さんからーーたしかにあった。 にっこりと得意げに微笑む乱菊さんの表情から この人は六番隊・隊士が御用達とも いえるこの居酒屋にわざとルキアを連れてきたのだと悟る。 背中から抱きついたまま俺の首に腕を回してぐったりと動かないルキアの腕を引いて 胸に抱える。 乱菊さんのペースに巻き込まれて飲んだんだろうーーコイツにしては高い体温で 身体の自由が利かないのか 抵抗なく俺の膝の上に落ちてきた。 そのくせ、赤く染まった頬で不機嫌そうに唇を尖らせて赤い目じりの潤んだ瞳で 俺を睨み上げてくるーー扇情的で逆効果なのをコイツは未だ気付いていない。 目の前の新人達は真っ赤な顔でルキアに魅入っていたーー 「気付かなくて悪かった・・・」 ルキアの顔を胸元に押し付けて隠した。 酔ったルキアは 「許さぬ。」と言葉を吐きながら俺の胸にそのまま頬を摺り寄せるほどの ”甘えた”モードになっていた。 ーーだから!   俺のいないところで飲んで欲しくねぇんだっつーの。 周りの視線も俺の腕の中のルキアに集中していた。    ため息一つ大きく落として 俺の横で腰に手を当てて銚子から酒を飲みながら成り行きを 楽しげに見ていた乱菊さんに頭を下げる。 「乱菊さん、すみませんでした。  悪いんっすけど、俺はコイツを家に送って来ますからすみませんついでに、こいつ等の  相談を聞いてやってもらえますか?  飲み代は俺が持たせてもらいますから。」 「ふふ〜〜ん いいわよぉ〜〜。  じゃぁ〜、これからは松本乱菊さんのお悩み相談た〜〜いむ  なんっでも話してちょ〜だいねぇ〜〜」 どっと驚喜の歓声が上がり、しんと成り行きを見ていた居酒屋内の空気が一気に沸いた。 隊士達もその関心もあっという間に乱菊さんに集まる! 他隊のーー いや、副隊長としても 女性死神としても人気の松本乱菊さんと話せる機会 なんて 平隊士じゃぁ 滅多にないこと、その乱菊さんが話しだけでなく 相談に乗って くれるとあってはルキアを抱えて居酒屋を去る俺に興味あるヤツなんてもういない。 正直、酔っ払った乱菊さんの悩み相談の回答なんて不安いっぱいだ。 だが、もうこの際俺の知ったこっちゃねぇ!! 後ろで飲んでいたヤツラの視線が驚愕と羨望でいっぱいで見開かれて 俺たちを 見送っていたとしても 今はもうどうだってよかった! 問題はこの腕の中のルキアだ。 過去の経験からコイツがこんな風に急に連絡をしてきたってことは十中八九俺に話したい 何かがあったってことだ。 こんな風に酒を飲んだこともそれを証明していた。 この小さな胸に溜めさせずに吐き出させてやったほうがいいーーだし、俺が知りたい。 少しの酒なら話してくれ易いのだが、こんなに酔っ払ってはうまく聞き出せるのか・・・?! 後日じゃ 「別に話などなかった」 と言って きっとコイツは口を割らねぇ! とりあえず冷たい水を飲ませて酔いを醒まさせて 涼しい屋根の上でゆっくり話を聞く ことにする。


  Mar.23. 〜 May.06.2010   『やる気』でした。 クリックありがとうございました。  あとがき