雨 sideB
夜半に強く降りだした雨が、部屋の闇に、心の中に重く響く。
ーーーやっぱり・・・・。
隣で俺に背を向けて寝ている腕の中のルキアを少し身体を起して覗き見れば、
目をあけてじっと己の手を見ていた。
「・・・・・ん、恋次。起したか?」
「いや、この雨音の所為だ。」
そう言って腕の中のルキアを抱きしめて小さな身体を自分にぴったりと寄せる。
「・・・・・・・・れんじ。 どうし」
「少しさみーんだよ。」
そう訊かれるのを予測して 言葉を遮って 返事をする。
ーーー 雨の所為で眠れねぇのか・・・・・、ルキア。
柔らかなルキアの髪をそっと指先で撫でつける。
ーーー ルキアの身体が一瞬びくりと震えた・・・・・
「・・・・恋次、やめ」
「うるせぇ、少しくらいいいだろ。
柔らかくって気持ちいいんだよ、てめえの髪。」
あくまでも自分の為に触れてるって言う その言葉は乱暴なのに、
口調は穏やかで温かくて 触れる指先は とても優しい。
言いようのない想いで胸が詰まり、涙が零れそうになる。
小刻みに震えだす自分の身体を抱きしめる。
ーーー だめ、恋次に気付かれる。 とまれ
「・・・ルキア、来いよ。」
そう耳元で甘く囁やかれ、腕を解かれて 簡単に身体を半転させられる。
「・・・・・あ、恋次・・・ぃや・・・」
体重をかけないように。
けれど、逃げられないように恋次が圧しかかり 口付けてくる。
ーーーこんな気持ちを抱えたまま抱かれたくない・・・
「・・・・やめろ ・・・れんじ・・・・やめ ・・・・ぃやぁ・・・」
抵抗する私の両腕を難なく拘束すると、
帯を解いて
袷を開いて
素肌が曝され
体中に唇を落されて 指先で 掌で
肌感覚を 研ぎ澄ますように触れられ 煽られる
私の感覚の全てが恋次だけを求めだす・・・・
「いや・・・・れん・・・・どうし・・・
やめ・・・・やぁ・・・・・れん・・じ・・」
恋次の腕の中で泣きながら抗議してるくせに
恋次の与える快楽に溺れて
だんだんと何も考えられなくなっていく・・・・
そうして 意識も 感覚も もう何もかもが
恋次に全て埋め尽くされる
熱に浮かされたように恋次を呼んで 求めて
波に呑まれて
翻弄されるままに
何度目かの波に意識が 完全に呑まれるその刹那
ーーールキア 愛してるーーー
恋次が 切なく囁いたのを聞いた・・・・
狡いぞ・・・ 馬鹿
感情が 一番昂ぶってる こんな
一番分からなくなってる時にしか 言ってくれないなんて
一番聞きたい言葉・・・・
俺に抱かれる事を泣きながら拒否したルキア・・・・
抵抗を許さず、無理矢理抱いて 意識を失うまで抱き潰したのは 俺
泣きながら甘い声を上げて、切ない声で俺の名を呼んで・・・・
与えられた快楽に溺れて 俺に満たされ、全て忘れて呑まれてしまえ
ルキア。 堪らなく愛おしい。
他の男を想って眠れないなんて 俺の胸が痛まねえわけじゃねぇが
そんなこたぁ 本当は どうでもいい
嫌なのは 苦しそうな辛そうなお前をただ見てること
泣きそうな憂い顔のお前は 俺には辛すぎる
俺はもう双極の時に思い知らされたから・・・・・大事なのはお前だけだと。
救いの言葉など持たない俺
救いを求めない 一人耐えるだけのお前
だから
たとえ一時の事でもこんな方法でも忘れられるなら俺は
お前を無理にでも抱いて忘れさせてやる
強引な方法をとる俺に お前のその後悔や懺悔の分の感情をぶつけてくればいい
そうして 俺に分けろ その痛みを
こんな方法しかお前を苦しみから救う術を知らない不器用な俺に怒ればいい
今も雨は 激しく降りしきり、雨音は変わらず
不安や闇を呼び覚ますように強く響いている
ルキアの寝顔が穏やかなのを確認して
そっと口付けて抱きしめたまま眠りに落ちる
明日の朝のルキアの怒声を覚悟しながら・・・・・
雨 sideA
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