始解:side 十三番隊 十三番隊の副隊長・志波海燕はいつまでも隊に馴染めないでいる朽木ルキアを傍で 書類仕事や隊長の浮竹の世話などの仕事をさせて居場所を作るようにしていた。 妻を失くしたばかりの白哉の気持ちがよく分かるから、朽木白哉からの依頼を無碍に できない浮竹十四郎と志波海燕はルキアがどんなに頑張っても席官に任命できない事を 後ろめたく思っていたが、それでも公正さにかける、贔屓だと誹られるべき事ではあっても 気持ちは同じだったので白哉の望む通り席官に任命しないでいた。 それでも歯を食いしばって早く強くなって自分たちの役に立ちたいと、義兄に認められたいと 強さをひたすら求めて頑張るルキアが健気で肩入れせずにはいられなかった―― 「隊長、もっと前向きに対応しましょう。」 そう言って、副隊長・志波海燕がルキアに空き時間に熱心に剣術の指南をした。 席官になる、ならないに関わらず弱い死神は死ぬしかないからだ。 ルキアが始解できるようになって誰よりも喜んでくれたのは海燕だった。 「今すぐ、隊長に報告行くぞ!」 と言って、懸命に制止しようとするルキアの言葉を丸無視して その細い腕を 掴んで強引に引っ張って いつものように雨乾堂に無遠慮に飛び込んで浮竹に 満面の笑みで勢いよく報告した。 「隊長、隊長! やりましたよ!  ついに朽木のヤツが始解出来るようになったんスよ!!  しかも真っ白ですっげぇ綺麗な斬魄刀だったんで ぜひ見てやってくださいよ!!」 興奮して勢い込んだ海燕がふと気付いて 自隊の隊長の私室を見渡してみれば、 驚いている浮竹隊長の他に四番隊・卯花隊長と浮竹の悪友ともいえる京楽隊長が 笑顔で突然の侵入者である自分たちを見ていた。 「ーーって・・ありゃ・・?」 「まぁ、それはよかったですね、ルキアさん。」 「ほう、そりゃぁ すごい♪  ぜひ見せてもらわなくっちゃねwwww」 「/////////うっわぁあああ・・・ と、とんでもないです!   あぁ・・あ、申し訳ありません、お話中にお邪魔してしまって!!    海燕殿、早く失礼いたしましょう!!」 「おいおい、なんだよ。  せっかく見てくれるっつーんだから見てもらえよ。」 「はっ?!    海燕殿!? ちょ、すこしは私の話をーー」 この後、抵抗虚しく海燕と京楽隊長にまで押し切られてルキアは自隊の修練所で 錚々たる隊長格の前で始解して見せることになる。 いつの間にか現れた市丸隊長も「なんやの? 楽しそうやね。」と見学していたという―― 始解したルキアの斬魄刀をこの中のいったい誰が評したのかーー 「アノお貴族さまの飼い猫がやっと始解したってーーー」 「なんだよ、”始解”出来るだけの能力があったってのか?!!  アノ可愛い顔とパトロン様のご威光で卒業と入隊ができただけのくせに!」 「ばーか、面白いのはこれからだって。  たかが平隊士の”始解”を見るために浮竹隊長だけじゃなく、志波副隊長、卯花隊長や  京楽隊長、市丸隊長までが揃ったっていうんだから!!  流石に拾われた猫でも、飼い主が大貴族様様って訳さ。」 「はっ、なんだよそれ、さすがは朽」「馬鹿!!」 「ソレ(家名)を言うなって!   聞かれてたらヤバイだろーが!」 ”朽木ルキア”には口さがない連中からの嫉み、妬みを含んだ捩れた噂が絶えない。 表現の違いはあれ、そこかしこで彼女の実力を知らない連中が嫌な噂を囁く。 勝手に一人歩きする言葉が 耳目を集めて死神達のやっかみと嫉妬を含んだ 噂になって この後しばらくルキアをまた苦しめることになるーー ”現在の尸魂界で最も美しい斬魄刀”


  どう頑張っても悪い噂に傷つけられるルキア だからこそ、余計に志波海燕は救いの存在だったのでは・・・。 「始解/side恋次」